越智健二先生

越智健二先生を偲んで

留和会創設65周年記念会(2017年10月)にて
留和会創設65周年記念会(2017年10月)にて

越智健二日本大学名誉教授が令和4年(2022年)11月13日に逝去されました.コロナ禍ということもあり,葬儀・告別式は親族のみで済まされたとのことで,大学や学会の関係者や卒業生の見送りも叶わず,大変悲しくさみしいお別れとなってしまいました.私は越智先生の教え子の一人であり,長年研究室でご指導ご鞭撻を賜った者として,この弔辞の辞を執らせていただきます.

 越智先生は愛媛県越智郡大西町のご出身で,昭和12年(1937年)6月27日生まれ,愛媛県今治北高等学校を卒業された後,本学工学部工業化学科(現理工学部物質応用化学科)から,同大学院工学研究科応用化学専攻(現理工学研究科物質応用化学専攻)の修士課程に進学・修了され,昭和38年(1963年)4月,本学部に臨時雇として奉職されました.その後,昭和50年(1975年)3月に工学博士(日本大学)の学位を取得され,昭和58年(1983年)4月には本学短期大学部応用化学科に教授として着任され,平成5年(1993年)4月に理工学部に勤務替えされました.以来,平成18年(2006年)3月31日に定年退職されるまでの43年間の永きに亘り,学生の教育・研究指導および研究活動ならびに学術研究,学協会での諸活動に鋭意尽力された結果,同年6月に日本大学名誉教授の称号を授与されています.

 また,越智先生の専門分野ですが,先生は化学工学分野の熱力学を専門とし,特に成分分離・精製に必須の各種物性の測定と,それらの熱力学的信頼性の評価ならびに物性推算法に関する研究に精進され,多くの成果を上げられ,化学工学分野の混合物の相平衡および熱物性の測定と理論研究の発展に貢献されました.一方で先生は学協会の諸活動にも積極的に取り組まれ,なかでも分離技術会では各種委員会の委員長,副委員長または会長を歴任され,同学会の発展に尽力され,化学工学分野の学術発展に多大な貢献をされました.

 そのため,以上のような功績が認められた結果,先生は平成29年(2017年)4月に瑞宝小綬章の叙勲という栄誉に浴されています.

 この叙勲は,教え子にとってもこの上ない誇りであり,また一方で,教え子の我々にとっては,越智先生にお目にかかり,お酒を飲みながら,またカラオケに興じながら,お話を聴かせていただけることが楽しみでなりませんでした.そのような楽しい時間を先生と持つことができなかったことが残念でなりません.最後に越智先生に感謝とお別れの言葉を記します.

 越智先生,これまで本当にありがとうございました.心よりご冥福をお祈り申し上げます.

栗原 清文

分離技術会 会誌「分離技術」53巻1号より

化学工学熱力学の国際会議「MTMS ’18」(2018年9月)にて
化学工学熱力学の国際会議「MTMS ’18」(2018年9月)にて

 2022年アメリ化学工学会年会から帰国直後の11月21日,越智健二先生のご逝去の報に接しました.化学工学会基礎物性部会の前身である物性定数調査委員会の委員長を務められ,また恩師で私をアカデミックの世界に導いてくださいました.逝去されたのは私がアメリカに出発した11月13日でした.9月に電話でお話したときは体調がやや優れないもののお声ははっきりされていたので安心していたのですが,突然のことで栃木先生・栗原先生とともに言葉を失っております.越智先生は気液平衡のみならず液液平衡・固液平衡・混合熱など,幅広い物性に着目し,その正確な測定方法の確立に尽力されました.越智先生のこれらの成果が現在の研究室のベースとなっており,私が今回のように国内外の学会で研究成果を発表できるのも,先生のご指導のおかげです.越智先生が蒔かれた種を芽吹かせ,花を咲かせることが先生への恩返しだと思っております.越智先生のご冥福を心よりお祈りいたします.

松田 弘幸

化学工学部会基礎物性部会

2023年ニュースレターより一部抜粋

 

 2023年3月に東京農工大学にて開催された化学工学会第86年会において,「2液相を形成する2成分系の相平衡の測定 ―メタノール+シクロヘキサン,2-ブタノール+水系―」と題して,越智先生が1990年代に取り組まれた2液相を形成する気液・液液・固液平衡の精密測定の研究成果を松田が紹介させていただきました.